臓器移植には新鮮な臓器が必要です。しかしながら、血流を停止してから使用するまで早ければ早いほど良いわけですが、あまり長時間持ちません。

輸送のための準備と移植前の準備に余裕を見て3時間が必要と仮定すると、許される輸送時間は左記の各時間から3時間を引いた時間が限界時間になります。心臓なら1時間しかありません。そのため、保存方法の改善による総阻血時間の延長はたった5分であっても、とても重要です。

臓器搬送は、原則としてまず日本臓器移植ネットワークの緊急自動車または定期便や新幹線などの公共交通機関を使うことになっていますが、搬送が時間的に間に合わない場合には、民間の航空会社が運行するチャーター機を使います(100~300万円)。

現在のドナー臓器は国内において は腎臓を除いて循環状態の良い脳死患者に限られ ているため圧倒的に不足しています。

そのため

(1)臓器を少しでも長く新鮮に保つ方法や保存液の開発、また

(2)将来的には細胞破壊をしない凍結保存技術の開発

はとても重要です。

臓器の劣化の重要な要素は、生きている人間の老化と同様、活性酸素による細胞破壊です。

検体輸送箱現在、取り出された臓器はナトリウムイオンを防ぐ特殊な保存液*に浸し、マイナス4℃になるよう氷で冷やしながら、一般的なクーラ―ボックスで運びます。

氷に触れていると壊死が起こるため注意が必要です。医療において多くの先端技術が導入されている今の時代、進化が大いに期待される分野と思います。

輸送後は保存液に浸された臓器をクーラーボックスから取り出し、保存液から取り出し使用しますが、この時の温度変化や空気に触れることにより、活性酸素により細胞破壊が進み新鮮さは失われます。

これはワインや果物や肉やマグロなどの食品も似ているかもしれません。
肉やマグロでは酸化や温度変化による細胞破壊により細胞から水分が排出されドリップとなり、人間では細胞が老廃物の出し入れができず老化します。どれも酸化が原因であり、ワインも食品も人も鉄も酸化は禁物です。

高純度の窒素ガスで置換する技術をワインサーバー、食品キーパー、臓器ボックスに応用することにより、酸化を抑制し新鮮な状態を少しでも長く保つことができ、そして、技術革新により、いずれ酸化抑制技術と細胞破壊の少ない急速凍結・溶解技術との合体により、食品や臓器の新鮮長期保存が可能になると信じます。

 

*臓器保存液

いくつもの臓器保存液が存在しますが、1970年代に開発されたUW液は現在も標準的な保存液です。細胞内液型組成の Ca2+不含液であり、浸透圧の 調整にhydroxy-ethyl starch (HES)やラクトビオン酸が、抗炎症、血管弛緩、ATP の前駆物質と してアデノシンが、抗酸化のためにアロプリノールやグルタチオン が、緩衝成分にリン酸バッ ファーが配合されています。

例: Belzer UW® Cold Storage Solution

Ingredient g/L mmol/L
Hydroxyethyl starch 50.0 NA
Lactobionic acid 35.83 105
Potassium dihydrogen phosphate 3.4 25
Magnesium sulfate heptahydrate 1.23 5
Raffinose pentahydrate 17.83 30
Adenosine 1.34 5
Allopurinol 0.136 1
Total Glutathione 0.922 3
Potassium hydroxide* 5.61 100
Sodium hydroxide/Hydrochloric acid (adjust to pH 7.4)
Water for injection q.s.